月別アーカイブ: 2020年3月

ベンゾジアゼピン系?非ベンゾジアゼピン系?

こんにちは。調剤薬局に勤務する薬剤師のKODAMAです。

今回は、睡眠薬のお話です。

睡眠薬でよく処方されるのが「ベンゾジアゼピン受容体作動薬」と呼ばれる薬剤です。睡眠薬の多くが、このグループに属しています。このグループの薬剤は、GABA(A)受容体複合体に含まれるベンゾジアゼピン受容体という部分に結合することでGABAの作用を増強し、鎮静作用をもたらします。更に詳しく説明しますと、ベンゾジアゼピン受容体である「ω受容体」に作用するのですが、「ω受容体」には2種類あり、異なる特徴をもっています。

ω1受容体・・・催眠作用

ω2受容体・・・抗不安作用・筋弛緩作用  

ここでベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の違いが出てきます。前者は、ω受容体の選択性がありません。ω1受容体にもω2受容体にも結合します。そして後者は、ω1受容体の結合選択性が高くなります。

したがいまして、ω1受容体にもω2受容体にも結合するベンゾジアゼピン系は、催眠作用のみならず筋弛緩作用もあります。筋肉の緊張にも関与するということです。緊張が強くて神経症的な不眠に有効とされています。肩こりなど伴う場合にも選択されます。しかし、高齢者ではふらつき・転倒のリスクが高まるので、高齢者での使用は慎重になる必要があります。

ω1受容体に選択的に結合する非ベンゾジアゼピン系は、神経症的傾向の弱い不眠症の方に適しています。また、高齢者にも転倒リスクの点で使いやすいです。

ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系の代表的な薬剤をあげます。

ベンゾジアゼピン系・・・マイスリー、アモバン、ルネスタ、ロゼレム

非ベンゾジアゼピン系・・・ハルシオン、レンドルミン、デパス

もし今、服用している睡眠薬がベンゾジアゼピン受容体作動薬であれば、ベンゾジアゼピン系か非ベンゾジアゼピン系どちらなのか確認してみると、担当医がどういった理由でその薬を選択されたのかを知る一つの手立てになるかもしれません。

サインバルタはなぜ朝食後?

こんにちは。調剤薬局に勤務する薬剤師のKODAMAです。

先日、患者さんから「サインバルタはなぜ朝食後の指示になっているのですか?」と質問を受けました。今回は、サインバルタについて説明します。

現在、うつ病や不安障害の治療の第一選択薬は「SSRI」や「SNRI」に分類される薬剤です。サインバルタは「SNRI」に属しています。

うつ病や不安障害の患者さんは、脳内における神経伝達物質のノルアドレナリン、ドパミン、セロトニンなどが不足しています。これらの神経伝達物質を簡単に説明しますと、

ノルアドレナリン=「覚醒」 不足すると・・・無気力、無関心、意欲低下

ドパミン=「喜び、快楽」 不足すると・・・集中・やる気・性欲などの低下

セロトニン=「精神安定」 不足すると・・・不安、緊張、イライラ

となります。
したがいまして、これらの神経伝達物質を増やすことが、うつ病や不安障害の治療に繋がります。

ここで冒頭に出てきたサインバルタですが、サインバルタは「SNRI」というグループに属する治療薬で、具体的にはセロトニンとノルアドレナリンを脳内に増やそうとします。SNRIのS=セロトニン、N=ノルアドレナリン です。「SSRI」は、主にセロトニンを脳内に増やそうとします。

「SNRI」の場合は、セロトニンのみならずノルアドレナリンも増やしてくれるということです。ノルアドレナリン=覚醒と、先ほど説明いたしました。つまり、意欲低下の著しい患者さんには「SSRI」より「SNRI」の方が適していると言えます。

そこで、冒頭の「サインバルタはなぜ朝食後なのか?」に話を戻しますと、サインバルタを服用するとノルアドレナリンを増やすことで神経の高ぶりが起こる可能性があるのです。したがいまして、夜に服用すると不眠の原因となりかねないため、朝食後服用が望ましいということになります。